RAID導入の目的(1)
RAIDを導入する際は、何の為に導入するのかという「目的」を明確にすることが実際の構築・運用のベースとなります。ここでは、主に「目的」とされるRAIDのメリットを3点あげて解説します。なぜ「RAIDが必要」なのか、漠然としたイメージをここで明確な目的に変換しておきましょう。
第一の目的「冗長性の確保」
RAIDを導入する最も大きな目的は、「冗長性の確保」です。冗長性とは先にも説明したとおり「本来であれば余分なものを付加することで可用性が高められている状態」。
RAIDに限って言えば、「HDDを余分に追加して、いざというときに壊れにくくする」ということになります。
この場合「壊れにくい」というのは、例えば「一台くらいのHDDが動かなくなっても、とりあえずシステムは停止しない状態に保てる」という事。
システムの信頼性を向上させること、と言うこともできます。
例としてHDDが一台しか内蔵されていないサーバを考えてみましょう。
このサーバはファイルサーバとして運用されており、日々使用する共有データが保存されています。
データは毎日更新されるので、テープドライブを使用して毎日夜中にバックアップされる状態になっています。
データを失う心配はありません。
さて、ある朝出社してみると、サーバが稼働していないことが判明しました。
調べてみると、幸いにも昨晩のバックアップは正常に取れている事が確認できました。
そこで、急いでシステム保守を行っている会社に連絡。
どうにか今日の午後には復旧に来てくれる事になりました。
これで今日の夕方か明日の朝には復旧できるはずです。めでたしめでたし・・・ではありません。
今日の夕方か明日の朝には復旧できる、ということは、それまではファイルサーバのデータは使用できないということです。
毎日使用するデータが保存されているファイルサーバです。
この中のデータにアクセスできなければ、今日はほとんど仕事にならないということです。
そこに気づいたとき、あなたは思い出します。
「今日中に仕上げなくてはいけない報告書がファイルサーバの中に保存されていた!」あなたは途方に暮れてしまいました・・・。
トラブルに備えてバックアップを取ることは非常に重要です。
この例でも、「明日になれば」データは取り戻せるので、最悪の事態は避けられたわけです。
しかし、問題は復旧までに時間がかかるという事。それまではデータを使用できませんから、丸一日分の業務が損失になると考えられます。
上記の様に締め切り間際のデータの場合ももちろんですが、毎日当たり前に使用していたデータにアクセスできなくなるというのは、想像以上にロスが大きいものです。
RAIDを導入する最大の目的は、この「時間のロス」をなくすこと、つまり「冗長性」を確保することなのです。
RAIDでは「複数のHDDを使用することで、HDDの故障を担保する」仕組みを実現します。
例えばRAID5の場合ならばHDDは最低でも3台使用されますが、万一この内の一台のHDDが動かなくなっても、システム自体は残りの2台のHDDだけで稼働を続けることができる仕組みになっています。
この仕組みを導入していれば、先の例の様に「復旧するまではデータを使用できない」ということもありません。
とりあえず動いている2台のHDDで稼働を続け、その間に壊れたHDDを新しいものに交換することで再度3台の「冗長性のある状態」に復元することができます。