物理障害
HDDの機械的な部分に障害が発生しているものを「物理障害」といいます。
物理障害は「データ復旧ソフト」では復旧することができません。
不良セクタ
当店へのご依頼で最も多い症状です。データが保存されているプラッター(ディスク)上に「不良セクタ」が発生し、正常に読み取れない、読み取り動作を阻害する、といった症状が現れます。
この、不良セクタが発生している状態下において、WindowsやMac等の操作で何度も読み取りを試みたり、「CHKDSK」や「Scandisk」、「Disk First Aid」などのディスクユーティリティを実行すると、改善するどころか不良セクタが増加し、症状が一段と悪化します。最終的にHDDを動作させるためのファームウェアが記録されている「サービスエリア」に影響が及び、HDDが起動しなくなる(BIOSで認識しない)状態に至ることがあります。当店では専用の装置で不良セクタをコントロールしながら強制的に取り出す処置を行います。
ヘッド故障
プラッターに記録されたデータを読み書きする「磁気ヘッド」が故障する障害です。
ヘッドは通電時、高速回転しているプラッターから浮上していますが、何らかの原因によりプラッターに接触してしまう「ヘッドクラッシュ」が発生することがあります。このときヘッドがプラッターを大きくキズつけてしまい、データ復旧が不可能となることも少なくありません。また、経年によりヘッド劣化し読み取りができなくなるケースがあります。
ヘッド故障の典型的な症状として「カッコン音」(カッコンカッコン音がする)が発生します。これはヘッド壊れているためプラッターのマーキングを読めず、読み取りを何度も試行している状態です。また、HDDは認識するものの、一部のデータしか読めないといった症状の場合、複数あるうちのいくつかのヘッドが故障していることも少なくありません。
故障したヘッドはHDDを開封して交換する以外に直す方法がありません。HDD内部はチリやホコリの侵入を許さないため、クリーンベンチ等の清浄度が保持された空間以外では開封できません。当店はクリーンベンチを完備しております。
ヘッド吸着
通常、ヘッドはプラッターを浮上しながらデータの読み書きを行いますが、停電やバッテリー切れなどのアクシデントでヘッドがプラッター上にピタッと「吸着」してしまうことがあります。電源を入れると「ウッウッウッ」と苦しそうな音がするのが典型的な症状です。
この時にHDDを叩いて吸着を解除しようとすると、ヘッドがプラッターに吸着したままスライダーから脱落し、処置困難、復旧不可能となることがあります。当店ではクリーンベンチでHDDを開封し、吸着したヘッドを剥離する作業を行います。吸着したヘッドは破損していることが多いため、必要に応じてヘッド交換も実施します。
制御基板故障
HDDの裏面にある「制御基板」が故障する障害です。一般的な症状としてはプラッターを回転させるスピンドルモーターが動作しなくなります。電源の逆接続、過電圧、過電流等により発生することが多くみられます。
おおよそ2005年以降のHDDは、HDDの本体と制御基板とが紐づけされており、たとえ同一メーカー、同一型番の制御基板に交換しても動作しません。メーカーによっては制御基板をオリジナルのものから交換すると、重要なパラメーターが消失してしまい、復旧不可能となることがありますのでご注意ください。
ファームウェア障害
HDDを動作させるための「ファームウェア」に異常が生じることにより発生します。症状としてはBIOSで認識しなくなる、型番や容量が明らかにおかしい(容量1TBなのに0MBなどと表示される)など、BIOSで正常に認識されない、BIOSで認識はするものの、動作が非常に遅い(読み取り速度が数KB/s)、読み取ろうとするとずっとBusy状態に陥る、といった症状が出現します。
スピンドルモーター障害
プラッターを回転させるための「スピンドルモーター」が故障する障害です。電源を入れても回転しません。また、最近ではあまりみられませんが、回転を支えるベアリングが固着、オイル漏れするケースもあります。
スピンドルモーターはそれ単体で交換することはできないため、プラッターを取り外して正常なHDDに移植するという非常に困難な処置となることがあります。
宮澤 謹徳 オーインクメディアサービス株式会社代表取締役
情報処理安全確保支援士(登録番号:000079号)
データ復旧は1990年代前半のフロッピーディスクの復旧を皮切りに30年以上のキャリアがあります。テクニカルライターとしても活動し、パソコン解説書、ムック、雑誌など多数に寄稿。秋葉原在住。